仕事をするうえで意識したい、OSI参照モデルのプラスアルファ

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こんにちは。クラウドアーキテクチャグループの小川と申します。私たちの部署は、ネットワーク、ストレージ及び仮想化基盤といったサービス全体が利用するインフラの設計構築を行っています。部署のミッションは担当しているインフラをクラウド化して、アプリケーションの実行環境を開発者やWebディレクターへオンデマンド提供を実現することです。

その中でも私はぐるなびのサービス全体のネットワーク設計全般を担当しています。あまり表に出る仕事ではありませんが、表舞台に登場したときには皆さんがくすっと笑顔になるようなキャラを目指して日々頑張っています。

今回は、OSIの階層についてお伝えしたいと思います。ネットワークを学んでいる方やインフラに携わるエンジニアたちの参考になれば幸いです。

OSI の階層は10レイヤーまである?

ネットワークを勉強していると、物理層~アプリケーション層のOSI 7階層の話が語られるかと思います。 しかし、事業会社のネットワークエンジニアとして働いていると、「○○を実現したいから必要な通信環境が欲しい」という目的を汲み取って設計したり、時には自分で目的を作ることがあります。

OSI 7階層は通信を実現するための手段について定義したものなので、「通信を使って何を実現したいのか」という目的は定義されていないと私は考えています。

IT業界ではOSI 7階層を補う3階層があると言われています。

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これらの階層について、業務での実例と合わせて説明したいと思います。

第1層(L1) 物理層

その名の通り、物理的な接続を表します。

実際の業務内容

単純なところで機器をラッキングしたり、ケーブルを配線して結線したりします。マニアックなところで、光伝送装置の導入を検討したりしています。

第2層(L2) データリンク層

物理的に接続された機器同士の信号(フレーム)の受け渡しを表します。MACアドレス、Virtual LAN (VLAN)やL2スイッチなどの要素がL2に当たります。

実際の業務内容

L2スイッチを使ってVLANをどのラックや仮想ホストへ届けるかなどを設計しています。

第3層(L3) ネットワーク層

ネットワークにある端末同士の通信を表します。パケット、IPアドレス、ICMP、ルーティングプロトコル、ルーターやL3スイッチなどの要素がL3に当たります。

実際の業務内容

データセンター内でIPアドレスの配置を検討したり、ルーターを使って外部の拠点と接続したりといったことを行っています。

第4層(L4) トランスポート層

端末同士の通信に対して、再送の制御やサイズの調整などの通信制御を表します。TCP、UDPやファイアウォールなどの要素がL4に当たります。

実際の業務内容

ファイアウォールを使ったネットワークセキュリティの設計などを行っています。

第5〜7層(L5~7) セッション層、プレゼンテーション層、アプリケーション層

接続の手順(L5)、データの表現の仕方(L6)、アプリケーションのふるまい(L7)を表しますが、ネットワークエンジニアの仕事では、これら3つの層をまとめてL7として扱うことが多いです。SSL、HTTP、SMTP、次世代ファイアウォールやロードバランサーなどの要素が当たります。

実際の業務内容

SSL証明書の管理やHTTPヘッダ/ペイロードを使ったロードバランサーの設計などを行っています。

第8層(L8) 経済層

ぐるなびはインフラに乗っているコンテンツで売上を出している会社です。無限にお金を使えるわけではありません。いくらL1~7で素晴らしい設計をしたとしても、お金がかかりすぎると利益率を下げてしまいます。機器を購入する費用だけでなく、保守、回線及びラックなど継続的にかかる費用も考える必要があります。機器を買うときは償却期間全てのコストを並べて相見積もりをして、コストパフォーマンスの最も良い業者を選ぶ、機器を減らしてデータセンターのラックを開け、ラック費用を減らすといった工夫をしています。

例:相見積もりの結果(償却期間5年)

項目 A社 B社 C社
機器費用 100万円 110万円 120万円
保守費用(年額) 10万円 8万円 5万円

上記のような相見積もりが出てきた場合、機器費用だけ見るとA社が一番安いですが、5年間の費用を見ると、A社は100+(10×5)=150万円B社は110+(8×5)=150万円、C社は120+(5×5)=145万円となり、C社が最も安くなります(実際には、その他の機能検証などを重ねて選定します)。

第9層(L9) 政治層

初めに作ったネットワークインフラを後から大幅に変更するのは難しいです。社員の多い会社ですので、皆さんそれぞれ、やりたいことや思いをもって仕事をしています。ネットワークの制限が理由でやりたいことが実現できない事があってはいけないので、まわりの空気を読んであらかじめ設計しておくことが重要です。また、新しい技術を投入する際に、会社の中期計画や部門の目標など自組織より上の組織の計画に沿って設計するといった工夫をしています。

第10層(L10) 宗教層

コスト削減を目的に新機能を導入しても、利用し、愛着を持ってもらわないと効果が出ません。また、保守切れやリース切れによってネットワーク機器をリプレースしなければならなくなるときもあります。そういった場合、利用者に理解してもらって切替の調整をする必要があります。コスト削減の利点やリプレースによって生まれる新機能を分かりやすく説明し、切り替えると大きなメリットがあると説くことは必要不可欠。利用者のマインドを変えていく布教活動を行うことがあります。

OSIの階層まとめ

事業会社のネットワークインフラは、技術的な側面だけではなく、インフラを使って事業の成長や継続を後押ししなければならないと考えています。

おわりに

教科書に記載されているのは7階層まで。しかし、実際にビジネスとしてインフラを担当すると、残りの「経済層」「政治層」「宗教層」は無視できない存在です。

これからインフラに関わる方、すでに関わっている方問わず、プラスアルファの3層を意識しながら仕事をすると、よりよいインフラが作れるようになるのではないでしょうか。


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‘小川

2009年ぐるなび入社。前職は文教、公共系の大規模ネットワークの構築やロードバランサーの製品担当などネットワークに関する仕事に幅広く関わっていました。ぐるなびのネットワークは大体知ってます。趣味はトロンボーンを拭くこと、MLBを見に行くこと、ダイエット中と周りにアピールすることなどです。