勉強会を自走させるためのノウハウをまとめてみた

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こんにちは。開発部門フロントエンド開発グループ、グループ長の関家です。今回は私たちがぐるなび社内で開催している「フロントエンド社内セミナー」を例に、エンジニア業界では欠かせないセミナー(勉強会)の進め方や事前準備などのノウハウをお伝えしたいと思います。

フロントエンドの勉強会は半期に一度実施

フロントエンド開発グループでは半年(半期)に一度、数人で一斉に発表を行うイベント形式での勉強会「フロントエンド社内セミナー」を開催しています。時間は業務終了後の18時ごろ。フロントエンドの話をメインとしたもので、フロントエンドエンジニアはもちろん、社内のメンバーであれば誰でも聴講できます。

登壇者はグループ内公募による推薦と立候補により定めます。事前に定めたテーマについて15分間発表をしてもらっています。

2016年9月に開催した第1回目は7名が登壇し、70名が聴講者として参加。2017年3月に開催した第2回は5名が登壇し、聴講者の数は55名でした(第2回目に参加者の数が下がってしまった理由は後述します)。

いまでこそこのような規模になった社内勉強会ですが、2016年のはじめころまではうまく機能していませんでした。そこで私が主体となって勉強会の体制を整えた話と、50名〜70名規模で勉強会を実施するための知見をまとめていきます。

機能していなかった勉強会を革新

JavaScriptをはじめとするフロントエンド技術の変化は早いもの。エンジニアは市場動向のリサーチや技術習得のために継続的・反復的な自己研鑽の取り組みが必須となります。

2年前にも勉強発表会の場はありました。毎週1回実施している1時間のチーム定例会議のうち20分がその場です。しかし、うまく機能していませんでした。

理由は2つあります。1つは、選択してもらうテーマの難易度設定が難航していたこと。メンバーの知識やスキルにばらつきがあり、どのレベルの話をするか決定しにくかったためです。もう1つは、モチベーションの喚起が課題となっていたこと。勉強会を実施しても実業務に適用できるのかが不明で人事評価に結びつきにくかったのです。

私が以前在籍していた会社では社内外勉強会・セミナーを頻繁に行う文化があり、在籍中はさまざまな勉強会・セミナーに参加していました。そこでぐるなび社内の状況を打破するために、前職までの経験などを参考にしながら、勉強会の体制を整えることを決めました。

評価体制の改革

旧体制でボトルネックとなっていたモチベーションの問題を解決するために、「フロントエンド社内セミナー」は重要な業務のひとつとし、評価の仕組みを整えました。

セミナーの登壇者は、半期ごとに設定する目標のひとつとして「フロントエンド社内セミナー」に関する目標を設定。実際に登壇したら、その目標の達成率は120%となるよう社内調整を実施しました。なお、運営委員長を務めた場合も評価にカウントするようにしました。

準備期間を6ヶ月間設けたスケジュールを制定

それでは、勉強会運営の話に移ります。運営準備、当日の進行などの運営をおこなうのは運営委員のメンバー。半期のはじめにセミナー準備を開始して、半期末に発表を行います。つまり、準備期間は6ヶ月を要します。

一般的な勉強会の感覚ですと、6ヶ月という準備期間は長いと感じる方もいらっしゃるかもしれません。ただ、フロントエンド開発グループの勉強会をおこなうにあたっての最優先事項は、登壇に不慣れなメンバーにも無理なく参加してもらえること。そして、サポートをおこなう側(運営委員会)も業務時間内から工数を捻出することを考え、このような期間を設定しました。実際に運営してみると、半期ごとに取り組む施策としてキリよく、メリハリをつけながら業務をおこなえています。結果的に感じているのは、ちょうど良い期間を設定できたかな、ということです。

具体的な話に移ります。例えば2017年3月に行った第2回の準備スケジュールは以下の通り。ズルズル後ろ倒しになって進行が滞らないよう1ヶ月ごとに進捗を確認していきました。

<3月開催第2回のスケジュール例>

11月登壇者決定
12月テーマ決定
1月スライド内の項目(見出し)を確定
2月スライド完成
3月セミナー開催

準備期間

ここからは勉強会準備・勉強会当日・開催後に分けてお話していきます。まずは準備段階から。

必要な役割・運営人数を洗い出しておく

勉強会運営委員のメンバーだけでも実施できるよう以下の表を用意しました。

項目 適正人数(人) 担当者調整先
運営委員長 1
運営委員 1〜2
MC 1
タイムキーパー1〜2
告知1
アンケート・レポート作成 2
会場予約1
日程調整1
当日会場設営3〜5
マイク用意1
カメラ用意、撮影1
ビデオ用意、撮影1
誘導係1
登壇者4〜5

※担当者は決まり次第記入、調整先は必要に応じて記入していきました

登壇者は自己推薦と運営委員会からの声掛け

登壇者は運営委員会から声をかける場合もありますが、基本的にはモチベーションの高い人にお願いしたいと思っています。現状では自己推薦で立候補された方はほぼ100%登壇している状況です。他者推薦はスキルアップのためのキャリアプランニングとして提案しています。例えば第2回目セミナーで運営委員長を務めたのは当時新卒2年目の女性でした。

彼女はもともと勉強会の運営に意欲的だったこともあり「登壇する?それとも運営委員長をやる?」と相談して、今回は運営委員長としての業務をお願いし、運営委員メンバーのアサインも託しました。

テーマ設定は登壇者に任せる

テーマ設定については基本的には登壇者にお任せしています。チーム定例の場で勉強会を実施していたときは私がフロントエンド技術の市場トレンドに沿ったテーマを設定したのですが、うまくマッチングしなかったため、登壇者自身にテーマを設定してもらうようにしました。

しかしテーマ選択や内容の方向性が勉強会の意図と離れているようであれば、使用するスライドの内容について調整を依頼することもあります。また、発表の1ヶ月前までにはスライドの制作が完了するように登壇者のフォローを行っています。

告知は2段階で実施

勉強会の告知は2週間前。フロントエンド以外にもさまざまな部署へメールで連絡しました。以下は、メール文例です。

ぐるなび Front-end 社内セミナー 2016年度下期 開催のお知らせ

ぐるなび Front-end 社内セミナーは、ぐるなび開発部門フロントエンド開発Gが中心になって開催しWebフロントエンドを取り巻く新技術や実践、動向についてご紹介する勉強会イベントです

日時・場所

日程2017年03月08日(水)
開場18:10
開始予定18:30 ~
終了予定~ 20:00
会場8階 イベントスペース
主催開発部門 フロントエンド開発G


聴講対象者

  • 職能、雇用形態に関わらずぐるなびに常駐するすべての方
  • Webフロントエンド技術に興味をお持ちのすべての方

プログラム

時間内容タイトル
18:30~18:35ご挨拶
18:35~18:501コード品質を高めるはじめの一歩〜ESLint導入のススメ〜
18:50~19:052壊れにくいCSSの作りかた
19:05~19:203WebGLの世界
19:20~19:30休憩
19:30~19:454ふろんとえんどえんじにあ と うぇぶでざいなぁ
19:45~20:005Progressive Web Appsに必要な技術


開催の趣旨・目的

ぐるなび Front-end セミナーの趣旨や目的についてはこちらをご参照ください
フロントエンド社内セミナーについて (※1)

聴講における注意事項

  • 聴講者の事前エントリーは行わない予定です。着席可否は先着順による可能性がございますがご了承ください。
  • 会場での飲食について、飲み物の持ち込みは可能です。業務時間定義の都合上、酒類の持ち込みは厳禁とします。
  • 記録用に動画、写真を撮影する場合があります。

(※1)開催の趣旨・目的の欄には社内で使用しているConfluenceに作成した概要をまとめた文書へのリンクを掲載しました

その後、リマインドのメールに加えて開発部門のグループ長会議の場でも勉強会開催の告知をしました。グループ長に伝えることで各グループメンバーに情報が伝わり、集客が見込めるためです。1回目の勉強会では、開催日の2週間前の会議で告知できました。しかし、2回目の勉強会のときにはグループ長への告知は開催当日に。結果、第2回目は参加聴講者が減少。告知のタイミングは改善していく余地があると考えています。

当日の進行

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開催当日は、開始30分前から9名で会場のセッティングを開始。MCには概要やテーマ傾向を伝え、開会時に聴講者にも説明し、改めて会の目的を場の全員に共有しました。

また、スムーズな進行のためにはタイムキーパーの存在が欠かせません。10分前、5分前、1分前、終了といったように登壇者に時間を掲示するようにしました。登壇者自身が発表している様子を振り返ることができるように当日の模様は静止画と動画で撮影しました。

勉強会終了後

フィードバック用にアンケートを実施

登壇者と運営のフィードバックのため、当日参加してもらった聴講者にアンケートを実施。各テーマの理解度や説明のわかりやすさ、開始時間や発表時間、全体の時間配分などについて意見を集めました。

第1回目に行ったアンケートは大変役に立ちました。1人当たりの発表時間については適当であるという声がある一方、トータルの時間が長いという意見が多かったのです。登壇者の人数が多すぎたと反省し、2回目では登壇者を少し減らしました。また、「次に取り上げて欲しいテーマ」という項目をもうけたところ、「Progressive Web Apps」「CSSを効率的にきれいにする方法」といったテーマを取り上げて欲しいというリクエストがありました。そこで、第2回目ではこれらのテーマについて発表を実施。聴講者のニーズを実現しました。

登壇者へのフィードバックを実施

発表が終わったあとは、フィードバックを実施します。プレゼンを見ると、良い点や改善点が見つかります。例えば登壇時にデモンストレーションのモックを作る人が多いのですが、聴講者のレベルに合っていないことや、説明が一段階足りない場合も。そういうときには、「もう少し聴講者目線に近づくことでより伝わりやすい発表になるのではないかな」とアドバイスします。

また、発表の様子は発表者本人にはわかりにくいもの。次にスライドを動かそう、ここでこの話をしないと、というように発表に手一杯となってしまい、観客の反応までみるのは難しいためです。

観客とのギャップを補うために希望者にはフィードバックを実施。当日の発表時の動画や、発表後に聴講者からとったアンケートの結果を踏まえつつ振り返ります。なお、フィードバック内容を伝えるときはただ結果だけを話すのではありません。まずは褒める。次に改善点を話し、最後にもう一度褒める、などの工夫をしました。

改善点

今後改善していきたい箇所について紹介します。

他部署のメンバーも巻き込みたい

主にフロントエンドエンジニア向けの技術勉強会ではありますが、フロントエンドエンジニア以外の職種の方にも関心を持っていただけるような内容にしたいと考えています。その理由は以下の通りです。

  • 登壇者のモチベーション喚起のため
  • サーバーサイドエンジニアやデザイナーにも関連する内容もあるため

デザイナーなど他職種の方でもフロントエンドエンジニアリングの知見がある人はきっと興味を抱いていただける内容だと思っています。私たちフロントエンドの勉強会を通して別の部署にも一定の刺激を与えて、ぐるなび全体の技術力の発展を図れればと思います。

そのために社外エンジニアや他部署のメンバーをゲスト登壇者として呼んで内容にバリエーションをつけたり、聴講参加者を社外から募って公開セミナーとしたり、登壇者と参加者双方が受ける刺激の質量を増やし、課題を解決していけたらと思います。

業務に活用できる発表内容としたい

聴講者側から質問がほとんどなかったことも課題です。登壇者の説明を聞いても実際の業務のどこに活かせるか、どうしたら今のサービスが良くできるのかが伝わらず、実業務との乖離があるようです。

これまでは登壇のハードルを下げるため、基本的には登壇者がテーマを自由に選定できるようにしていました。「セミナー内容が実務に活かしやすい」と実感してもらうためにも、今後はテーマ選定をより工夫したいです。具体的な技術の社内活用事例を紹介したり、回によってはテーマを絞ったりするのも有効そうです。

セミナーがエンジニアにとって有意義なプロセスとして認知されることを最終目標とし、セミナーのために調べ、考えたことが実装面にも活かされるようにしたいと考えています。

おわりに

エンジニアの技術勉強会における最大の課題は「継続すること」だと言われています。長く続けることを念頭に置いて、方向性を調整しながらイベントの舵取りを続けたいです。

登壇者に良かった点をフィードバックすることで、自信につなげてもらえるのではないかと考えています。セミナーを通して「スキルアップにつながる体験だ」とメンバーに思ってもらえるような勉強会を今後も実施していきたいと思います。


‘関家’
1998年、最新WebブラウザがIE4、NN4の頃よりWebコンテンツ開発に従事。HTMLコーダー、デザインエンジニア、MUエンジニアなど時代とともに呼び名を変えフロントエンド開発を担当。ゲーム機、TV録画機の専用コンテンツUI開発、オフショア責任者として海外駐在を経験。2015年より株式会社ぐるなび入社。フロントエンド開発グループ所属。